✅ 要点3行まとめ
• 依存症は“意思の弱さ”ではなく、脳の仕組みに関わる病気
• 自己否定が自己肯定感を奪い、さらに依存を強化してしまう
• 自分を責める代わりに、観察と小さな成功の積み重ねが大切
自分を責めすぎていませんか?
依存症に悩む多くの人が抱える、ある共通の感情があります。
それは、「自分はダメな人間だ」という思いです。
ギャンブルをやめよう、酒を断とうと決めたのに、また繰り返してしまう。
その度に、「意思が弱い」「また失敗した」「自分には無理だ」と、自分を責めてしまう。
それこそが依存症の“本当の苦しさ”かもしれません。
自分を責め続けると、脳と心はどうなる?
何度も自己否定を繰り返すと、自己肯定感(自分の価値を認める感覚)が下がります。
これは、心理学的にも依存症回復を妨げる大きな要因とされています。
実際に、米国の国立薬物乱用研究所(NIDA)やWHOの資料でも、「恥や自己否定感は回復の妨げになる」と明言されています。
なぜなら、自分を信じられない状態では、「もう一度やってみよう」と思う力が湧いてこないからです。
「失敗」ではなく「学びの記録」として見る
繰り返してしまった日を「失敗」として自分を責めるのではなく、何がトリガーだったのかを観察する日ととらえる視点が有効です。
- なぜ今日は飲んでしまったのか?
- 何がきっかけだったのか?
- どんな気持ちのときだったか?
これは「ABC分析」などの認知行動療法の手法でもあります。
自分を責める代わりに、原因とパターンを探ることが、次の行動に生きてきます。
依存症は「意思の弱さ」ではない
これは最も強調しておきたい点です。
現代の依存症研究では、「依存症は脳の報酬系の問題であり、病気の一種である」と明確にされています。
意思が弱いから繰り返すのではなく、脳の回路が変化してしまっているから繰り返してしまうのです。
禁煙や禁ギャンブルが難しいのは、意志力の問題ではなく、脳のクセに対処するプロセスが必要だからです。
どうすればいいか?
ここで大事なのは「自分を責める」から「自分を支える」方向に考え方を変えることです。
1. 自分を責めない環境に身を置く
仲間の存在、やさしいコミュニティ、他人の回復ストーリーは、自分を少しずつ信じるきっかけになります。
2. 小さな成功を積み上げる
今日一日やらなかったこと、ちょっと我慢できたことを数えてみる。
「3日やめられなかった」より「1日やめられた」に注目します。
3. 記録をつける
なぜやったのか、どう感じたのかを記録することは、自己理解を深め、再発予防にもつながります。
最後に:あなたは弱くない
やろうと決めて、またやってしまって、それでも「もう一度やろう」と思っている。
その繰り返しの中に、とても強い回復力があります。
自分を責めるのではなく、よくここまで頑張ってきたと、自分を少しでも認めてあげてください。
参考資料:
- NIDA(National Institute on Drug Abuse): The Science of Drug Use and Addiction
- WHO: Addictive Behaviours Factsheet
- 『依存症の脳科学』(ダニエル・リーブマン)